2017年4月25日火曜日

$49パワー計のひずみゲージ考(2)

前回のグループ分けに沿って、実験をしてみました。

■グループ2:パワー算出用のトルク検出用とは別に、余計な力成分の検出用ひずみゲージを設けてパワー値の補正をしている。
 Shimano、Quarq Cinqo、4iii

以下、パイオニア特許図面です。

ペダルの外側を踏むと、赤の矢印方向に捻じれがより大きく生じ、ひずみゲージ369a8は伸びて、369b8は縮む。
これを利用すると、どの程度ペダルの外側を踏んでいるか把握できるので、このデータを利用してパワー値を修正する。

4iiiの米国特許出願でも同様の記載があります。

試しにやってみた。
結果は・・・キャリブレーションが面倒。

パワー測定用のひずみゲージ回路とは別に、補正用ゲージのキャリブレーションも緻密に行う必要がある。
お手軽パワーメータを目指す今回の目的には合致しないので、どうするか悩み中です。
ただ、この方式を実装すれば、設計が甘い潔い市販品よりも正確なパワーメーターを作れます。


■グループ3:上記グループ2のような補正はないが、構造上、余計な力成分の影響をあまり受けない。

 SRMを見習ってスパイダーアームの以下の赤丸位置にひずみゲージを張って、ペダリング。

結果は・・・ひずみの変化量が足りない。
剛性がなく柔らかめのTiagraクランクでテストしましたが、あまり歪の変化がない。
ひずみゲージを張る位置を見直して再度トライする予定です。

もう一つ、正確なpowertapハブのように、円柱の軸にひずみゲージを張り、トルクを測定する方法。
以下のように、クランクシャフトの中にひずみゲージを張ってペダリング。


これは、正直、一番期待していました。
構造はpowertapと同じに思えたし、ひずみゲージ、充電池、電子回路をすべてシャフト内に収納できる。
見た目が以下のようにすっきりするし(写真はボケてますが)、失敗してもクランクの外観に傷がつかない。


結果は・・・ペダルの外側を踏むとパワー値が小さくなる。
「またまた冗談でしょ」
と再度ペダルの踏位置を外側に。
結果は同じ。ガックシ。

円柱にひずみゲージを張る場合、以下のOMEGA社の解説の図Fのように張る。
Powertapハブも同じ。


しかし、クランクシャフトの場合、左のクランクアームがボルトで固定されるため、ペダルの外側を踏むと、クランクシャフトが外側に引っ張られて、すべてのひずみゲージが横み引っ張られて縮んでしまう。
この結果、パワー値が小さくでてしまうと推測。

では、この方式を採用しているRotorのINPowerは大丈夫なのか?
ある記事に「INPowerは、大きなトルクで低回転で踏んだ場合、またスプリントで800w以上出した場合に、パワー値が低く出る」とのコメントが。
要は、大きなトルクでシャフトが外側に引っ張られて、パワー値が小さく計測されるような。
私の実験結果と同じ?

この方式の最大の欠点は、ひずみゲージの張りにくさ。
ゲージの接着に2回ほど失敗して、心が折れました(不器用なので)。
とてもお手軽とは言えません。


■グループ4:パワー算出用のトルク検出は行うが、補正は行わない(潔い)。少なくともホビーレーサーのFTP領域以下では、補正を行う必要はなく、正確。

結局、現時点で、一番お手軽なのは従来通りクランクアームの上下に4枚ひずみゲージを配置する方法かと思います。
でも、クランクのねじりに対する補正はありません。
したがって、動物園で、象さんに
「ペダルの外側を踏んで、パワー値が大きく出るか見てくれる?」とお願いして
「分かったゾウ」(寒)
と了解してもらえば、すぐに影響が出るとは思いますが、人力の場合は不明です。

以下の左のゲージは、eBayでよく販売されている幅広のもの。
右のゲージは某国産の曲げ測定用のもの。


左の幅広タイプのゲージは、右のタイプに比べて、ペダルの外側を踏んだ際に生じる捻じれによく反応してしまう。
ネット上に、この幅広タイプのゲージをクランクアームに付けて「簡単にパワーメータを作れた」という記事もありますが、おそらく、ペダルの外側を踏むと、問題にぶつかると推測してます。

右側の細長のゲージをフルブリッジ(ゲージ4枚構成)で、クランクアームのペダル軸に近い場所に配置したところ、700w(私がペダルの端っこを踏んで安定出力できた最大値)程度では、ペダルの外側を踏むことによる影響はでていません。

以下のサイトでは、FEAによる分析で、クランクの捻じれがどのように出るか、CG化されています。ひずみゲージの位置決めの参考になります。
ttps://hackaday.io/project/2314/logs

実際に、どの程度のトルクから影響が出るは、ペダル軸の長さ(TIME製は短く、フラぺは長い)、クランクの剛性によると思います。

パワートレーニング本にあるトレーニングメニューでは、FTPの200%までしか使っていません。
とすれば、700wを正確に計測できれば、FTP350wまでは対応できることとなります。
FTP300wを切って久しい私には十分で、もう、この方法でいいじゃん、という誘惑と格闘中です。



2017年4月19日水曜日

$49パワー計のひずみゲージ考

以下はshimanoの特許図面。
パワーメータのトルク(図18のFΘ)算出には、他の3つの方向の力(図19のFz、図20のFrおよび図21のMから生じる捻じれ方向の力)をすべて測定したうえで、FΘの値を補正する必要があると知る。



上記図21の捻じれ方向の力はわかりにくいが、以下のパイオニア特許の図6(b)の通り、ペダル103を踏んだ時に、クランクアームには、rzの捻じれ方向の力が発生する。




パワー計測には、FΘの力だけを検出したい。しかし、ペダリング時には、Fr、Fzおよびrzの力がかかる。
シマノ特許の図18にある、上側のひずみゲージ138,178は、FΘの力がかかると伸びる。
しかし、Fz、Frおよびrzの力にも影響されて、実際には更に伸びてしまう。
その結果、乗り手にわかる現象として、ペダルの外側を踏むと、パワー値が実際よりも大きく出てしまう。
これを除去するには、rz、Fz、Frも測定してFΘから余分な力成分(rz、Fz,Frの影響度)を算出して除去する必要があるとのこと。

では、市販のパワーメータはどうなっているか。

以下、独断と偏見で、市販のパワーメータが、ひずみゲージが拾ってしまう余分な力成分をどのように処理しているか、分類してみた。
ちなみに私は、理工系の教育を一切受けていない、ド素人ですので、以下の内容は、勝手な妄想と思ってください。

■グループ1:余計な力成分を拾わないようメカ設計されている
 Powertap, InfoCrank

■グループ2:パワー算出用のトルク検出用とは別に、余計な力成分の検出用ひずみゲージを設けてパワー値の補正をしている。
 Shimano、Quarq Cinqo、4iii

■グループ3:上記グループ2のような補正はないが、構造上、余計な力成分の影響をあまり受けない。
 SRM。
 SRMは、ローギアのときは左に、トップギアのときは右にスパイダーアームが引っ張られ、余計なひずみが生じるが、この影響を補正する構造が見当たらない(少なくとも2ゲージのモデルでは)

■グループ4:パワー算出用のトルク検出は行うが、補正は行わない(潔い)。少なくともホビーレーサーのFTP領域以下では、補正を行う必要はなく、正確。
 R社INPower(たぶん)

■グループ5:ホビーレーサーのFTP領域ですら、トルクが不正確で補正なし。パワーメータとして機能しない。
 PowerCal、先日、自分で作った失敗パワーメータ。

$49.99の手作りパワーメーターはどのグループを目指すか。
今回は、お手軽お手頃に誰でも付けられるパワーメーターを目指したい。
「パワーメーターは欲しいが奥方の承認を得られない」という方でも、$49.99ならば「役員に飲み会に誘われて付いていったら、しょぼい居酒屋だった挙句、代金も均等負担だったつもり貯金」で賄える。

グループ1は論外。

只今、グループ2、3,4に属するものを実験中。